--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『ライブドア監査人の告白』

2009年02月19日 11:12

ライブドア監査人の告白ライブドア監査人の告白
(2006/05/26)
田中 慎一

商品詳細を見る

「今こうして冷静に振り返ってみると、日本の経済社会や制度の未熟さを露呈してしまったのがライブドア事件ではなかったか、との思いに至ります。日本の取締役、監査制度、証券市場、投資家、監督当局、そのいずれもが脆弱だから、ある意味、起こるべくして起こってしまった、と言えるのかもしれません。
2000年までのITバブルの時代、日本のインターネット時代が華々しく幕を開けた半面、実績のないベンチャー企業が一晩で書き上げた事業計画を見るなりベンチャーキャピタルが億単位の資金を投資したり、そうしたベンチャー企業が証券会社や証券取引所の甘い審査で簡単に上場に至り、といったモラルハザード(倫理観の欠如)が少なからず見られました」本文中より。


ライブドア事件の際、直近の監査担当をしていた著者による事件の経緯を語った本書。
堀江氏、宮内氏を含めライブドア内部のことや企業と監査法人の関係などその泥臭い部分まで書かれている著作。

「自己株売却益還流スキーム」
これが、今回ライブドアが使った利益水増しの手法。
実際上では自社と関係の深い、子会社の子会社の、というようなファンドを作り、そこでライブドアの株を売買していた。本来、この売買を行っている会社が関係会社に当たらなければ真っ当なのだが、ライブドアの場合は関係も深く、これは自社株の売買にあたる。
当時のありえないほどの株式分割やそれによる個人投資家の飛びつきによる、異常なほどの株価のう高騰をうまく使い、その市場で自社株を売りぬきライブドアの売上にしていた。
本来、自社株の売買は資本取引に当たるため、P/Lには売上なんか立たないはずであり、資本金などが増減するのみ。それなのに自己株にあたる部分の売買で得た利益を巧妙にライブドアの利益に上乗せていたのだ。
監査からも見えにくい、非常に巧妙な手口で。
また、それを見破った捜査当局の手腕も見事と言うしかない。

今回の構造自体は新らしいものだったがその背後にある粉飾に至る経営者の構造は常のものと変わらないと著者は主張する。
株主資本主義の罠。時価総額にこだわる経営。常に成長し続けなければならないという経営陣へのプレッシャーが悪い方向へとは働いてしまったのではないだろうか。

もともと本書はVC企業で働かれているベテランのVCの方におススメいただいた。
ファンド連結」とういうものの実体が何を表しているのかと知る図書としてだ。
実態が見えにくいファンド。それを悪用したのが今回の事件。
そして、そのファンド連結という法律を作ったものだから、実際の企業の体力とか規模とかいう視点に立つと逆説的にまた企業の実態が見えにくくなる部分も出てきた。
少なくとも健全に運営しているとすれば、この仕組みはない方がいいと思う。
法律なんて性善説に立つなら必要ない、全部そんなものかもしれないなとも考えられるけれど。

企業が粉飾などを行ってしまう構造として日本のベンチャー企業を取り巻く市場環境が整備不足という視点も少なくとも影響しているように思う。
アメリカでは、要するにエンジェルという段階の支援者達が、何度も経営者が持ってきた事業計画書にいちゃもんをつけ、企業の段階ではその経営計画やその成長への軌跡もはっきりしていることが多い。それに比べて日本はエンジェルがおらず、ある程度ベンチャー企業が大きくなってきたところで、VCが入ったり、証券会社が着いたり、監査法人が突いたりする。
そんな中では、それぞれのパートナー達の利益も見え隠れし、完璧なチェック・モニター体制が機能せずに企業のグレーな部分もすり抜ける余地も残っているのかもしれない。

著者の田中氏は、真正面からライブドアのグレーな部分に立ち向かい、このファンドを消滅させることに成功している。
しかし、罪に問われることはないのだが彼もまた事件に巻き込まれ、彼が所属していた監査法人は解散し、彼の人生も大きく変更させられざるを得なかった。
事件の紙面だけでは見えない被害者が数多くいることを本書を通じて知った。

少し調べてみたのだが、
彼はまた別件ではあるが、2008年に金融証券取引法で一時逮捕されている。
一時というのは、結局関与していないということで不起訴になり釈放されたのだ。
このエントリーに詳しいが、しかし不起訴の話なんてのはメディアではほとんど報道されない。近場では人徳なんて言葉も通じるが、メディアを通じた
世の中ではそんなものは報道されないし、多くの人には伝わっていない。
メディアで報道される逮捕というイメージで世間がどうこの人を見てしまうのか。
本書の評価にもこの一件は大きく影響したに違いない。
いろいろ考える一冊になった。
スポンサーサイト


最近の記事


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。